menu-sp-icon

Generative AI Japan

close-icon
HOME  >  ニュース一覧  >  キックオフイベントレポート ―「生成AI」で日本の産業競争力を高めるために、社会実装に向けた第一歩を踏み出す―
News
ニュース
キックオフイベントレポート ―「生成AI」で日本の産業競争力を高めるために、社会実装に向けた第一歩を踏み出す―

 

産学連携で生成AIの普及・活用を図る一般社団法人Generative AI Japan(以下、Generative AI Japan)は、2024年3月27日に会員向けのキックオフイベントをオンライン開催しました。

本団体は、生成AI活用における教育やキャリア、協業、共創、ルール作り、提言を行い、日本全体の産業競争力を高めることを目指しています。

本格活動となる今回のキックオフイベントでは、活動の方向性に関する共有のほか、生成AIのユースケースや技術動向に関するパネルトークも実施。その模様の一部をご紹介します。

【登壇者】
<パネルトーク ➀生成AIユースケース> 

白井恵里 理事
瀧澤与一 理事
則武譲二 理事
山田勝俊 理事
ファシリテーター:國吉啓介 理事

 

<パネルトーク ②生成AI技術進展 >
大谷健 理事
小俣泰明 理事
寳野雄太 理事
ファシリテーター:漆原茂 理事
理事プロフィールはこちら

 

産学連携で「生成AI」の活用を推進

國吉啓介氏(以下、國吉):本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。Generative AI Japanのキックオフ会を開催します。

本日ですが、4つのテーマで進めていきます。一つ目は、活動の方向性について、國吉よりご紹介します。続いて、パネルトークでは「ユースケース」と「技術の進展」の2つをテーマにお話します。最後に、今後の活動についてご説明していきます。

では、まず活動の方向性について共有します。


 

國吉:PwCコンサルティングのレポートによると、生成AIがいろいろなビジネスに使えるのではないかという期待が高まっていることがわかります。多様なツールを使うことで多くのことが可能になりますが、サービスとしてより多くのお客さまに提供しようとしたときに「本当に問題はないのか?」という不安も生じます。

 

 

國吉:生成AIの活用を進めていく中で、一社だけでは解決できない問題が数多くあると思われます。今後、さまざまな場面で生成AIの活用は必要不可欠になりますし、どのように活用すべきかを考えなければいけません。その時に、一緒に考えてくれる人がたくさんいれば、勇気も湧きアイデアも広がります。ぜひ、そういった取り組みを推進していきたいと思い、2024年1月にGenerative AI Japanが発足しました。

 

皆さんとGenerative AI Japanの活動の中でアイデアを掛け算することで、新しいものが生まれていくのではないでしょうか。いずれ発表の機会も設けられたらと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 

また短期間にもかかわらず、アンケートにお答えいただき誠にありがとうございました。生成AIを導入している会社は多いものの、使いこなしている方とそうでない方がいらっしゃいます。これからも進化していく技術に対し、どのようにサービス開発や、より発展的なものへと活用の幅を広げていくか、ユースケースを知りたいという声が集まっています。その他、ビジネス化への課題や利用が定着しない悩みなどもいただいております。

 

 

國吉:コラボレーションに対する期待を持たれている会員の方も非常に多く、産学連携や、実践的なガイドライン作成も非常に大事ではないかとご意見をいただいております。アワードの創設を希望する声もあり、こういったご意見を今後の活動に生かしていきたいと思っています。ぜひ、この後のセッションもご期待いただければと思います。

日常業務から新サービスまで「生成AI」を活用するには?

 

國吉:ここからはパネルトークに移ってまいりたいと思います。最初のパネルトークでは、白井さん、瀧澤さん、則武さん、山田さんをお招きし、どのような形で生成AIを社会実装していくべきか、「ユースケース」を共有します。

 

最初に皆さんが着目している「ユースケース・事例」についてお伺いしていきます。まずは白井さんから教えていただけますか。

 

白井恵里氏(以下、白井):日々の業務に生成AIを使うことで、みんなが少しずつ楽になります。それが最も生成AIの力を発揮できるのではないかと考えています。そういった点に着目して社内の事例を収集しています。

 

 

ちょうど今朝、メンバーズデータアドベンチャーカンパニーから「全社員の約90%が生成AIを業務で活用!常駐サービスにおける顧客提供価値の向上を目指して」と題したリリースを配信しました。

 

データ活用を支援するメンバーズデータアドベンチャーカンパニーでは、全社員の90%が生成AIを業務で活用しています。事例の数としては204件に上ります。

 

内容としては、コードの生成が最も多くなっています。弊社では業務でSQLのコードを書くことが非常に多いのですが、データベースから必要なデータを取り出して集計したり、できあがったコードを生成AIにレビューしてもらったりすることで、コードを効率的に生成しています。

 

次に多いのは、知りたいことをまとめたレポートの作成です。そのあとに、アイデアの生成や文書の作成などが続きます。この割合は、おそらく弊社メンバーの業務特性によるものだと考えています。

 

生成AIは、日々の業務全般に活用できる可能性があります。パソコンを使っている際に、ブラウザでGoogleの対話型AI「Gemini」などを開いておき、「これを聞いたら答えてくれるかな」「社内報の挨拶文を書いてほしい」といったことを気軽に打ち込んでみる。採用できる結果が得られることもあればそうでないこともありますが、そういった試行錯誤を重ねた結果、90%の社員が生成AIを使っているような状況になっています。



國吉:ありがとうございます。90%はすごいですね。則武さんはいかがですか。

 

則武譲二氏(以下、則武):私からは2つお話しします。一つは、ビジネスに定着させる鍵は、収益へのインパクトが大きい領域に生成AIを活用し、そこで生成AIの力を実感して成果を得ることだと思っています。

 

私自身も、生成AIの活用が世界でどれくらい進んでいるのか学ぼうと、TCSの資料をリサーチしました。

 

 

左上にあるとおり、システムの要件定義からコーディング、運用保守まで、工数を数十%削減している事例もあり、収益への影響が大きいことを実感しています。

 

もう一つCrushBankの事例では、運用保守におけるITチケットシステムでITチケットの概要や要約を生成AIで表示したり、関連するドキュメントを参照したりできるようにしていました。さらに、手書きのメモからUIデザインを作成するなど、画面の設計にも効果があると考えています。

 

TCSは、生成AIのチューニングに多大な投資をしており、効果的な領域を見極めて投資することの重要性を学びました。

 

國吉:ではお二人の話に加えて、技術的な側面についてぜひ瀧澤さんからお話しいただけますか。

 

瀧澤与一氏(以下、瀧澤):アマゾン ウェブ サービス(AWS)では、さまざまなお客様の声をいただいています。例えば、コーディングにおいて生成AIを活用すると、生産性が30%向上したというデータがあります。また、情報検索や質問回答、データ分析といった業務でも効果が見えてきています。

 

ユースケースとしては、既存の業務システムに生成AIの機能をいかに組み込むかが重要になってきていると思います。

 

一例として、臨床文書を自動で作成する「AWS HealthScribe」をご紹介します。面白い機能の一つとして、患者と医師の会話を音声認識で文字に起こし、その内容から必要な要素を抽出して、電子カルテの元となるものをAIで生成することができるようになります。これによって、医師の電子カルテを作成する業務が短縮され、医師が患者とのコミュニケーションによりフォーカスできるため、患者体験が向上します。

 

ただ、業務での導入には、生成された電子カルテの内容が正しいかどうか評価し、どの会話によって生成されたのかを検証できる機能も必要です。AWSでは、それらを加味した上で生成AIを活用したサービスとして「AWS HealthScribe」を提供しています。

 

 

これからの世の中では、自社のデータを活用して生成AIをより高度化していくことが重要になると考えています。自社データを使ってモデルを作成するのもいいですが、コストや技術力が必要になります。比較的簡単な方法としては、すでに学習済みのモデルに新たなデータを追加しモデル全体を再学習する「ファインチューニング」や、外部ソースから取得した情報を用いて生成AIモデルの精度を向上させる「RAG(Retrieval Augment Generation)」があります。RAGを使うと、自社データを取り入れ、検索結果をもとに要約する部分だけを生成AIで処理するなどのやり方ができると思います。

 

最近では、このようなアプリケーションの実装が増えてきており、AWSを使ってそれを実現しているお客さまも出てきています。自社のデータを活用して業務を効率化することが重要視されるようになってきていると思います。

 

國吉:ありがとうございます。RAGが一つポイントになるということで、いろいろな取り組みをされている山田さんはいかがでしょうか。

 

山田勝俊氏(以下、山田):弊社は、エンタープライズ向けAIプラットフォーム「FindFlow」を開発しています。私たちはLLMを直接作っているわけではないので、GPT-4やGeminiなどの上に独自のAIを活用したアプリケーションを構築しています。

 

わかりやすい例として、企業のQ&Aシステムがあります。ChatGPTの登場によって多くの企業が取り組み始めたと思いますが、データパイプラインに対する精度や質の面で課題を感じていました。そこで、独自のAIを使ってデータを学習させ、人間が曖昧な回答をしてしまう場合でも、正確な回答ができるようにしています。これによってプロセス改善につながり、電話での確認作業などを減らすことができます。

 

FindFlowを使ったQ&Aシステムは、すでに企業様に展開しています。

 

 

山田:今後は、FindFlowをエデュケーションにも活用していきたいと考えています。問題の自動生成や回答、パーソナライズされたレコメンデーションなどは、全て生成AIで実現可能だと思っています。特にBtoBの教育会社との相性が非常にいい。

 

それ以外にも、R&D企業では、退職者によって知識が失われてしまう問題があります。FindFlowを活用して情報を埋め込んでおけば、いつでもどこでも必要な情報にアクセスできるようになります。

 

カスタマーサポートの分野でも、生成AIを活用して精度を上げていきたいという要望が増えています。FindFlowをベースに実証実験を進めており、様々な事例が出てきています。

生成AIを活用し、ビジネスの選択肢を広げる

 

國吉:生成AIが生み出す社会変化の見立てについて、一言ずつ皆さんからいただけますでしょうか。

 

山田:生成AIに限らず、2016年頃からAI業界に関わってきた中で、生成AIによって従来のAIではできなかったブレイクスルーがあったと思います。しかし、皆さんの意見にもあったように、人間がやるべきことは何かという点について再提起がされると思います。同時に、生成AIを活用していかないと遅れをとってしまうことは確かです。

 

一方で、日本のようにDXが後進国と言われている国が生成AIを活用すれば、劇的な変化が起こると思います。

 

抽象的な意見になりますが、人間らしさとは何かを再提起できる重要な時期だと感じています。

 

國吉:ありがとうございます。では、続いて白井さんはいかがでしょうか。

 

白井:生成AIのビジネスインパクトを生み出すには、どこに使うかと、どのようなデータを組み合わせるかが重要です。AIに理解されやすく、独自性のあるデータセットを持つことが、ビジネスインパクトに直結します。

 

DXは、人間がAIに合わせて業務を再設計することだと思います。AIに理解しやすいデータを作り出すように業務が変化していくでしょう。その中で、人間に残るのは夢やビジョンを描き、責任を持つこと、生成AIの出力の質を判断する洞察力です。業務はAIに従いつつ、方向性を決定し責任を持つことが人間の役割になっていくと考えています。

 

國吉:瀧澤さんは、いかがでしょうか。



瀧澤:未来は明るいと思っています。Generative AI Japanのような団体での情報交換や議論が活発になることで、業務変革のニーズが高まり、どんどん進展していくと思います。

 

一方で、AIの責任については気になっています。変革が早すぎると問題や障害が起きる可能性があるため、未然に防ぐ必要があります。日本は産業変革において、ブレーキとアクセルのバランスを取ってきました。このバランスを保ちつつ、できるだけ早く進められると思います。

 

社会の中でガイドラインを作ることで、明るい方向性が見えてくると思います。これにより、安心して生成AIを使ったアプリケーションを開発したり、業務での活用が進んだりすると思うので、ぜひ取り組んでいきたいです。

 

國吉:ありがとうございます。まさにこの後の技術動向の話にもつながる部分だと思いました。則武さんいかがでしょうか。

 

則武:昨年、日経ビジネスと弊社が共同で行った調査では、DXを4つの段階に分けて企業がどの位置にいるかを尋ねました。多くの大企業はオペレーションの一部でDXを使い始めたものの、全体への広がりやビジネス価値の向上までは至っていないことがわかりました。

 

生成AIはこの壁を突破する鍵の一つになると思います。例えばプラント業界では設計や図面作成などの課題があり、これを乗り越えることで大きなインパクトが期待できます。生成AIのパワーを活用して新たなビジネスを作っていく選択肢も広がるでしょう。

 

DXという言葉が踊っている感はありますが、企業が本当に変わっていくタイミングが来ているのではないでしょうか。自分自身も取り組まなければならないと感じつつ、期待もしているところです。

 

國吉:皆さま、ありがとうございました。ぜひ勉強会で具体的に今日のお話の続きができればと思います。

「生成AI」と「ROI」をどう結びつけるか?

 

漆原茂氏(以下、漆原):ここからは技術トークです。本日のセッションでは、大谷さん、寶野さん、小俣さんとお話しできればと思います。お三方とお話しできること、非常にワクワクしています。

 

では、まずは「生成AI技術をどうビジネス価値創造に繋げるか?」についてお話ししたいと思います。特に、ユースケースがどのような分野から生まれるのか、ご意見を伺っていきたいです。大谷さん、いかがでしょうか?

 

大谷:まず、ROIが出るか出ないかという点では、世界的に見て出ると言われています。1ドル投資すると3.5倍のリターンがあるとのことです。重要なのは、どのユースケースを狙って回収するのかだと思います。

 

 

私たちが日本の企業を支援してきた中で、全てこの数字に当てはまるかというと、決してそうではないと思います。そこで大事になるのが、ユースケースです。

 

多くの方が要約やQ&Aなど取っ掛かりやすいところから始めていますが、最初の入り口を間違えると二度と使わない事態になってしまいます。そのため小さな成功体験を積むことが必要だと考えています。

 

ただこれらのユースケースはリターンが少なく、ROIの観点では弱めです。価値を高めていくためには、もっと違ったことをやる必要があります。

 

例えばデータ分析ツールに生成AIを取り入れると、データサイエンティストしかできなかった仕事を一般の方ができるようになり、バリューが高くなります。ただしパーソナライゼーションにはRAGのようなテクノロジーが必要で、複雑性が高くなります。

 

例えばEコマースでパーソナライゼーションを活用すると、売上に直結するユーザー体験の向上や離反防止につながり、高い価値が生まれます。完全自立型のコールセンターができれば、リターンは3.5倍を超えるでしょう。ユースケースによって、リターンには幅があることを理解しておく必要があります。

 

ユースケースを選定する際の考え方として、縦軸を複雑性、横軸をバリューとした4象限に分類することをお勧めします。企業が持つ多くのユースケースをこの4象限にプロットしていってください。

 

 

複雑性が低くバリューも低いユースケースは、馴染むために徹底的に取り組むという選択肢もありますが、ROIを目指すのであれば、複雑性が低くバリューが高い「ゴールデンユースケース」に注目すべきです。このゴールデンユースケースは片手以内、場合によっては1、2個になるかもしれません。

 

ゴールデンユースケースが見つかれば、実装も複雑ではなくリターンも大きいです。全ての企業がすぐに見つけられるわけではありませんが、できることをちゃんとやっていく中で見えてくるはずです。

 

さらに、難しいけれどやるべきことが出てくると思います。やるかやらないかは経営判断次第です。競合との優位性を保つために5年後、10年後を見据えた判断が求められます。

 

一方で、リターンが少ないのに難しいことは避けるべきです。この簡単なフレームワークを参考にすれば、生成AIの取り組みを比較的踏み外さずに進められるのではないでしょうか。

 

 

漆原:これからLLMや生成AIを使おうかなと考えている会員の方にとって参考になる情報をありがとうございます。続いて小俣さん、いかがですか。

 

小俣:生成AIを会社で深く活用し、ビジネス価値を創造するためには「技術選定」「各社規定」「導入支援」の3つのポイントが重要です。

 

「技術選定」は、Microsoft、Googleなどさまざまな企業が提供する技術の中から選定する形になります。

 

「各社規定」は特に重要で、例えば保険業界の会社へのコンサルティングにおいて、生成AIで作成したパワーポイントやプレゼンテーション動画をお客様に提供することの良し悪しが会社として判断できないことで、プロジェクトが進まないケースがあります。

 

そこでGenerative AI Japanのような組織が、日本でAIを活用してお客様にサービスを提供するのは問題ありませんよ、と伝えられるガイドラインを作成できたらと密かに思っています。もちろん、これは本気で取り組むと相当大変な作業です。コンサルティング会社などが大きな投資を行い、ガイドラインを作成していく必要があると思います。

 

本来は私たちが率先して行いたいところですが、まずは各企業で社内向けのレギュレーションを定め、GPTやGeminiなどの生成AIをどのように使用していくのか、お客様に提示する際にはどのような規定に基づくのかを明確にすることが重要です。

 

最後の「導入支援」はガイドラインを作成し、生成AIを導入するためのサポートを指します。生成AIに関わっていない人がガイドラインを作成することは非常に困難です。我々のようなコンサルティング開発ができる会社が他社の導入支援に入り、伴走して活用できる体制を整えることが必要です。

 

これらの3つのポイントが、生成AIを活用したビジネス価値創造には不可欠だと考えています。

 

漆原:まさにおっしゃるとおり、ガイドラインは大切ですね。ぜひGenerative AI Japanを活用して、みんなで各社向けのガイドライン作りにも貢献していければと思います。ぜひ一緒にやりましょう。続いて寳野さん、いかがですか。

 

寳野:活用支援も重要というお話がありましたが、ビジネス側の人も含めて期待値を適切に設定しなければ、生成AIの導入はミスが起きやすいと感じています。生成AIはドラえもんではありません。何を期待してよくて、何を期待してはいけないのかを理解した上で生成AIを導入することがすごく重要です。



生成AIの現状について面白いデータがあるので、紹介したいと思います。マッキンゼーが公開したレポートによると、ファッション業界において生成AIを全く使っていない人が30%後半から40%程度いる一方で、使っている人の多くは「たまに使う」「ケースバイケース」「実験的に利用」しているという状況です。実際にビジネス価値にどうつながるかを理解した上で業務に組み込んでいる人はわずか4%に留まっています。

 

このことは、ほとんどの人が生成AIの活用方法を把握していないということを示していると思います。ビジネス価値につなげる方法を見出すためには、生成AIの精度に対する期待値コントロールがすごく大切です。ビジネス部門とエンジニア部門が協力して、期待値を適切に設定し、ユースケースごとに許容できる誤差の幅を検討する必要があります。

 

生成AIの可能性はチャットだけではありません。例えばデジタル広告のクリエイティブに生成AIを使ってどういったバナーを作成したのか、どういった効果があったのかなど意味ベースで検索可能にし、再利用可能にするといった取り組みもあります。生成AIの幅広い可能性に目を向けることが活用の第一歩だと捉えています。

生成AIをベースに“社会変革”を起こす

 

漆原:生成AIが生み出す社会変化の見立てについてもみなさんの見解を伺っていきたいと思います。大谷さんからお願いします。

 

大谷:時間軸が変わったことを意識していただければと思います。生成AIを使うことによって、今まで感じたことのないようなスピード感で変化が起こることをぜひお伝えしたいです。

 

携帯電話やインターネット、SNSのユーザーが1億人に達成するまでに数年から十数年と、年単位の時間がかかりましたが、生成AIを代表するChatGPTはたった2カ月で1億人に達しました。このスピード感を前提に、AIをベースにした変革を進めていく必要があります。

 

日本企業の皆さまがこのスピード感についていけるように、私たちもGenerative AI Japanを通じてご支援していきたいと考えています。ぜひ一緒にスピード感を持って取り組んでいければと思います。

 

小俣:生成AIが絶対にやってくれないことは、決断・判断・行動です。裏を返せば、人間が究極できることは、これなんです。

 

社会変化を見立てると、決断した人、判断した人、行動した人の価値が非常に高くなります。それらを誰かに任せてしまうと、生成AIに取って代わられるかもしれない。よりこの格差が広がると思っています。このあたりをより意識しながら生活していくと、社会変化に対応できるような、自分の価値が生まれるのではないでしょうか。

 

寳野:日本にとって非常にエキサイティングな時期だと思っています。その理由は、日本語がハイコンテキストで同義語が多い言語だからです。このような言語は他にあまりないのではないでしょうか。また日本ではこれまでシステムへの投資が停滞し、デジタル化が進んでいませんでした。つまり非構造化データが非常に多いということです。

 

そんな中で、複雑でハイコンテキストな言語を処理できる技術が登場しました。これにより、一気にデジタル化が進むことが期待できます。日本は遅れていると言われていますが、私は遅れていると思っておらず、ここから最高の成果を出せると考えています。生成AIはそれほどインパクトのある技術です。ぜひ皆さんと一緒にディスカッションできればと思います。

 

漆原:ありがとうございます!これからは動画や音声などまで生成AI活用が広がっていきます。変化の早い最新技術情報についてもGenerative AI Japanの中で積極的に共有し、価値の高い使い方をみんなで考えていきましょう。

みんなでGenerative AI Japanを盛り上げよう!

 

國吉:最後に今後の活動について私からご紹介します。活動テーマはこちらに示したとおり3つの柱で進めてまいります。

 

 

まず「研究会とLab」についてです。オンラインでユースケース・技術動向研究会を4月から月に一回、開催します。運営メンバーと登壇者も募集中です。会員の皆さまと共にGenerative AI Japanの共創事例を作っていければと思います。

 

次に「イベント・共創推進」です。4月と12月ごろに会員サミットを開催したいと思っています。12月に向けてアワードの設立も検討しながら企画化を進めてまいります。

 

最後に「連携と提言活動」についてです。さまざまな団体と連携しながら、AI技術、UIUXや社会実装の変化についても学んでいく機会を設けたいと思います。さらにそれらの知見を政策提言につなげるべく、委員会などの形で提言活動を行うことも検討しています。

 

みんなで共創しながら、新しい価値の創造につなげていければと考えております。今日からどうぞよろしくお願いいたします。

 

白熱した議論であっという間でしたね。本日はどうもありがとうございました。