menu-sp-icon

Generative AI Japan

close-icon
HOME  >  ニュース一覧  >  第一回 生成AIユースケース動向研究会ー生成AIの最新動向、そして教育現場における活用方法とは─
News
ニュース
第一回 生成AIユースケース動向研究会ー生成AIの最新動向、そして教育現場における活用方法とは─

「ユースケース技術動向研究会」では、生成AIの技術や社会動向の最新情報や事例の共有、ビジネスユースケースを実際に活用されている方々から紹介いただきます。

 

第1回目は、株式会社自動処理 代表取締役の高木祐介さん、学校法人アルコット学園 しみずがおか幼稚園の副園長である鈴木雄大さん、株式会社ベネッセホールディングスの國吉啓介さんが登壇。國吉さんがモデレーターを務め、生成AIの動向や活用方法、教育領域でのユースケース事例などについて共有しました。

“創作の民主化”が実現!? 生成AIの最新動向とは

 

高木祐介氏(以下、高木):みなさま、こんにちは。株式会社自動処理 代表取締役社長の高木と申します。

 

高木氏:さて、今回の講演は全3回にわたってお話させていただきます。第1回目のテーマは「AIを取り巻く社会変化」。2回目以降については、みなさまからのご要望を伺えれば幸いです。

 

2022年11月にChatGPTが登場したことで、AIが文章作成を支援できるようになりました。2023年も、画像・音声の認識、言葉の発話、動画の作成など、AIの進化は止まることなく、様々なことが可能になりました。

 

マッキンゼーの資料によると、生成AIは年間約620兆円の価値を世界経済にもたらすそうです。これは、イギリス1国分の経済規模に相当し、世界経済への影響は非常に大きいと言えます。

 

一般的なシミュレーションでは、2030年までに約70%の企業が少なくとも1種類のAIテクノロジーを導入する可能性があると言われています。しかし、最新のレポートではアメリカですでに50%程度が使用しているとの話もあり、生成AIの普及は急速に進んでいることがわかります。

 

日本でも、2023年10月に国立情報学研究所がLLMを公開しました。LLMの研究開発について定期的に情報共有を行う「LLM勉強会」には日本全国からエンジニアが集まり、国産生成AI基盤モデルの開発に取り組んでいます。

 

そんな中、2023年12月にGoogleが「Gemini Ultra」という、GPT-4レベルの言語モデルを発表したことを皮切りに、今年に入り続々とGPT-4レベルの言語モデルが各社から発表されています。

 

また、オープンソースAIモデルの登場により、情報漏洩を懸念していた日本の企業も、自社のデータセンター内でローカルに運用できるようになりました。これは、技術的に大きな変化だと言えます。

 

次に、なぜ生成AIに世界が熱狂しているのかについてお話しします。これは皆さんもご存知の通り、AIの適用範囲が非常に広いからだと思います。ChatGPTの公開により、誰でもAIを使えるようになったことが大きなポイントです。

 

生成AIの活用例として、AIを用いたコーディングを支援するツール「GitHub Copilot」があります。2023年6月の時点で、プログラマーの92%がすでにAIコーディングツールを使用しているとのことです。国内での事例では、導入1ヶ月で35,000行分のコーディング時間を削減できたケースもあります。

 

プログラミングだけでなく、AIは医師国家試験にも合格しています。2023年2月に米国の医師国家試験に合格し、日本でも5月に合格したというニュースが話題に登りました。適切にChatGPTを扱うことができれば、一般人でも医師と同等の知識を得られることが証明されたわけです。

高木氏:さらに、AIは創作分野にも進出しています。ユーザーの指示に従って好みの音楽を作ってくれるサービスが登場。他にも、絵を描いたり、動画を作ったりできるAIも次々と開発されています。

 

今まで創作ができなかった人からは「創作の民主化」と呼ばれ、一方で実際に創作活動をしていた人からは「人間の創造力の破壊」と言われています。技術の進歩により創作活動ができるようになったことは変わらない事実であり、重要なのはこの技術を今後どう活用していくかだと考えています。

 

生成AIは、単なる技術にすぎない。重要なのは“使い方”

高木氏:ビジネス分野だけでなく、国家間の競争も始まっています。2018年に米国でAIに関する安全保障委員会が設立され、国家としての優位性を確保しようと日本、米国、EUが連携を強化しています。日本では2023年5月11日にAI戦略の検討が開始され、日本の生成AIに関する規制が国際標準と若干異なっている点が指摘されています。これが原因で、世界中の生成AI企業が日本政府に提言し、共同で取り組もうとしています。

 

その中で、GoogleのトップAI研究者がGoogleを辞めて、AI開発を手掛ける「Sakana AI」という企業を立ち上げるなど、日本でも様々な動きが見られます。

 

日本では2023年のG7で「広島AIプロセス」が提示され、最終合意されました。これは国際ルールと言っても過言ではありません。

 

このようなルール整備が進む中、私が少しお手伝いさせていただいた東京都では、2023年8月23日に全庁にてChatGPTの導入がスタートしました。当時はまだルールが定まっていない状況でしたが、AIの文書生成や利活用に関するガイドラインを作成し、東京都の職員全員が一斉に使い始めました。

高木氏:少し先の話になりますが、世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2023」によると、今後5年間で世界の労働者の約4分の1がAIの影響を受けるとのことです。6億7,000万人の労働者を対象とした調査で、6,900万人分の新規雇用が創出される一方、8,300万人分の雇用が失われるという、かなり衝撃的なレポート結果となっています。

 

雇用が失われる側に入るのか、雇用される側に入るのかは、今後の選択次第だと思います。これは雇用主にも突きつけられており、自社の社員を雇用し続けるためには、AI教育やリスキリングが必要になるのではないかと思います。

 

生成AIは単なる技術ですから、その技術単独で人を置き換えることはほぼできません。しかし、生成AIを使いこなせる人は、使いこなせない人に取って代わられることは十分想像できます。ですので、我々もここについて考えていかなければいけません。

 

今まさに世界が本当に変わり続けている状況です。

 

私も大学に入ったとき、インターネットがブロードバンドになったりコンピューターがパソコンになって個人のものになったり、iPhoneができたりしましたが、これは一消費者としてただ便利になったぐらいの感覚でした。

 

しかし、今回の「ChatGPT」やAnthropicの「Claude」、Googleの「Gemini」のような自分たちが触れる生成AIの技術が世界最先端になっているんですね。これらに触れて、自分たちでとにかく徹底的に生産性を上げていくことが非常に大事ではないかと考えています。

 

もう1年経ってしまいましたが、日本国内ではまだ生成AIを使っていない会社はたくさんあります。今ならまだ間に合いますので、このタイミングで一緒にAIを使い倒し、自社の適用範囲がどこにあるのか、どういうふうに使っていったらいいのかを考えていく必要があると思います。

 

おそらく、Generative AI Japanは、生成AIを一緒に使ってくれる仲間を見つける場所になってくれると思います。ぜひ一緒に生成AIを使い倒していきましょう。

生成AIは“80点”の回答を引き出せるツール

高木氏:次に、弊社での生成AIの利用実績について紹介していきます。

 

非常に大事なポイントは生成AIをどう使うかです。生成AIには意思があるのではないかと思っている人は多いですが、基本的にAIには意思も意識もなく、単なる数式の計算だけで動いています。

 

つまり、いろんな情報を学習したデータの集合知を元に動くので、特に意思はありません。いろんな人の知恵を集めて答えを出しますので、80点ぐらいの回答を引き出せるものだと考えていただければと思います。

 

この「80点」というのが非常に大事で、残りの20点は人間が付け加えないと100点にはなりません。AIを使い始めた人の中には、自分の専門分野ではあまり役に立たないと思うことが多いようですが、専門特化した経験を持っている人にはAIは勝てません。

 

弊社は自治体や社員からの意見を募集するプラットフォーム「アイデアボックス」を展開しています。社員からの意見や、行政に届く市民の声には重要なポイントが抜けていることがあります。そこで、生成AIを使って提案の概要、想定利用者、課題、利便性、主要な質問、事業内容、協力者、政策課の流れなどをまとめることで、提案の中であまり触れられていなかった内容も補完することができます。これにより、自由記述の意見でも特定の形式でまとめられるので、あとで寄せられた意見を整理しやすくなります。

高木氏:また、経産省と一緒に行った実証実験の中で、社内的な検討の中で実装してみて気づいた話ですが、実際の国会答弁の内容をAIに学習させる事で、国会質問に対する答弁案を作成する事が出来る事がわかりました。AIが作成した答弁内容は、実際の政府参考人の答弁内容とほとんど遜色ないものでした。国会答弁の案を作成するには専門的な知識や学習が必要ですが、AIを使うことで簡単に答弁ができるようになります。

 

弊社の事例では、PR TIMESの文字数制限に合わせて文章を書いたり、調査用アンケート情報から特定の情報を抜き出したりしています。日常的な業務では、議事メモからプレゼンテーション内容を作成することもあります。ただし、生成AIは生成AIが理解できるような内容しか残してくれないので注意が必要です。

 

また、打ち合わせの動画から直接仕様書を作成することもできます。議事録は人間が理解するための中間成果物ですが、AIは最初のインプットから最終アウトプットまで一気に出力できるため、効率的です。仕様書ができれば、次の会議では、それをベースに深い議論を行えます。これにより仕事の進め方が変わってきています。

 

最後に、弊社で、先日出した求人広告には、もともと画像がなかったのですが、AIで写真を追加したところ求人広告の効果が4倍になり、小さな会社ながら2週間で200名以上の応募がありました。

 

以上のように、生成AIは様々な形で活用することができます。みなさまと一緒に、これらの活用方法について一緒に勉強していけたらと思います。ご清聴ありがとうございました。

生成AIのハルシネーションを防ぐには?

國吉啓介氏(以下、國吉):高木様、ありがとうございます。Q&Aのお時間を設けたいと思います。ハルシネーションに関する質問がいくつかあります。先ほどAIは80点くらいの回答が得られるものだという話もありましたが、AIが間違えてしまう回答してしまうことを防ぐために、工夫している点などがあれば教えてください。

 

高木氏:ハルシネーションに関しては、いくつか間違いを防ぐ方法があります。一つは、「RAG」と呼ばれる、外部情報の検索を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術の導入です。ただ、それはPDFなどを読み込ませられるAIでないとできません。

 

生成AIだけで対応しようとする場合、プロンプトの中で「わからないものはわからないと言ってください」というような指示を与えることもあります。そういったプロンプトの工夫によっても改善できる可能性はあると思います。

 

國吉氏:なるほどですね。ありがとうございます。正当性の検証について興味を持っている方が多いようで、検証のしやすいケースや難しいケースの見分け方、工夫の仕方を知りたいという質問が来ています。いかがでしょうか。

 

高木氏:正当性の検証は、AIを超える知識を持っている人なら知識を元に見分ける事は簡単にできます。

 

知識不足な領域の正当性の検証を行う際に、簡単にできることとしては、Googleの「Gemini」にあるグラウンディングという技術を使えば、独自のデータソースに基づいて根拠のある回答を生成できます。同様に、AIを利用してインターネット検索を行えるようなPerplexity( https://www.perplexity.ai/ )やmorphic( https://www.morphic.sh/ )といった検索サービスも多く出ているので、それらを使えばかなり正当性のある結論が得られます。

 

ただし、インターネットの情報も間違っていることが多いため、背景となる根拠を論文に絞ったり、レビュー済みの図書や新聞社の情報に絞ったりすることで、ある程度正当性のあるものになると思います。弊社が実施している国会答弁案の作成に関しては国会議事録が根拠となっており、官僚や政治家の実際の発言内容を元に答弁案を作成しているので正当性があるという形で、最初から正当性のある答弁案が作成できるようになっています。

 

國吉氏:情報を取得する先を絞ることがかなり大事だということですね。高木さま、本日はありがとうございました。

 

幼稚園業界が取り組む、4つの生成AI活用事例

國吉氏:では、続いてユースケースです。鈴木さん、よろしくお願いします。

鈴木雄大氏(以下、鈴木):よろしくお願いします。

鈴木氏:本日は以下の内容について発表いたします。幼稚園業界初の事例として、実際に行っている4つの取り組みをご紹介します。その後、プロンプトのコツ、プロンプトフォーマットの例についてもお話しします。

 

まず一つ目の事例は、「世界に一つだけのマイぬり絵」というプロジェクトです。これは、OpenAIのサービスの一つであるカスタムGPTを使っています。カスタムGPTは、ユーザーの目的に特化したGPT-4ベースのAIをノーコードで作成できます。

 

マイぬり絵の制作の流れは、まず園児が保護者と相談して欲しいぬり絵を決め、Googleフォームで申請します。幼稚園側でその申請内容に従ってぬり絵クリエイターでぬり絵を生成し、印刷して園児に渡すというものです。

 

このプロジェクトのポイントは、体験型のAI教育であることです。生成AIでできることや著作権上できないことなどを学べます。例えば、ポケモンのキャラクターを指定する子どももいますが、著作権の都合でお断りしています。160名中100名以上から申し込みがあり、恐竜猫や遊園地など大人では思いつかないような面白い作品が生まれています。

鈴木氏:2つ目の事例は、カスタムGPTを使った事務業務のDX推進です。特別な知識や技術がそこまで必要ないので、おすすめの方法だと思います。事務業務を全てカスタムGPTに置き換えた結果、年間700時間の削減に成功しました。メール作成支援では20倍、挨拶文作成では15倍の生産性向上が見られました。

 

メール作成支援の実例では、例えば「7月20日お泊り保育。副園長 鈴木雄大から保護者へ。」と入力すると、事前にフォーマットを指定しているので、ほぼそのままメールで使えるような内容が生成されます。チャットで特定部分の修正を依頼すれば、メールの文面はそのままで指定した部分のみ修正してくれます。

鈴木氏:3つ目の事例は、音声解析AI電話「MiiTel」を活用した職員教育システムです。MiiTelでは、会話履歴のテキスト化と定量的な分析ができます。それらのデータをGPT-4を使って固有名詞の辞書変換や自然な会話へ修正し、会話データに目次をつけて、分析レポートに仕上げます。それをChatworkに送ることで、職員に対して5分以内にフィードバックができるようになりました。また、月次レポートとして電話回数を計算し、特定の保護者への連絡の偏りがないかなどを管理しています。

また、会話内容の共有も重要です。これまでは、どのような電話だったのかを口頭で聞く必要がありましたが、1日40件ほど電話があるため現実的ではありませんでした。その結果、トラブルの兆候に気づけないまま大きくなってから知ることがあったのです。この仕組みを導入したことで、会話の目次を見てトラブルかどうかを判断できるようになりました。さらに、固定電話からIP電話になったことで、同時に複数人が電話に出られるようになったのもメリットの一つです。

鈴木氏:4つ目の事例は、12年働いた主任の退職に伴う知識や経験の喪失を防ぐために作った「AI主任」です。管理者の業務の多くは、確認、判断、ルールに基づいた回答などいろいろですが、それらを主任にデータとして入力してもらいました。基本的には、その内容に基づいてGPT-4が回答するようになっています。

 

このシステムには、Chatworkからアクセスします。職員がChatwork上で「AI主任」宛に質問をすると、質問文が「AI主任」に送られます。

その後、「AI主任(GPT-4ベース)」が主任の知識や経験、ルールに基づいて回答を作成し、それをChatworkに返信するという流れです。

鈴木氏:このシステムを開発する際、RAGの技術を採用するか悩みましたが、結局使っていません。代わりに、スプレッドシートで知識や経験、ルールなどをジャンルごとに管理しています。例えば、日次データ、週次データ、月次データ、課題管理などをシートで分けて、それに紐づくChatworkのグループを作っています。そのグループからの質問があった場合は、対応するシートのみを参照するようにしています。データ量が増えてきたらRAGの導入を検討するかもしれませんが、今のところはこの方法で対応しています。

 

これによって、Chatworkからタスクの管理、課題管理、相談などができるようになりました。

生成AIの誤回答を防ぐために、人間による確認が必要不可欠

鈴木氏:続いて、プロンプトのコツです。こちらは、基礎と応用にわけています。

 

鈴木氏:プロンプトのフォーマット例については、最低限4つの要素「ペルソナ」「タスク」「コンテキスト」「フォーマット」があれば、ある程度の出力ができます。ペルソナは、どういう立場の人としての回答が欲しいのかを指定します。タスクは、何をしてほしいのかを示します。コンテキストは、背景情報を提供します。例えば「幼稚園で働いている」や「DXに対してあまり知識がない」などです。フォーマットは、箇条書きなどの出力形式を指定します。

鈴木氏:このフォーマットを用いた実際のプロンプトです。コピー貼り付けで、そのまま使うことができます。

鈴木氏:このプロンプトを使用すると、保護者からのデジタル化の要望に応えられるようなアドバイスを受ける事が出来ます。具体的には、DXを進める上でどのようなツールを導入したほうがいいかという提案や、保育現場への影響についても提案してくれます。

 

最後に、生成AIは必ず誤回答する可能性があるため、人間による確認が必要不可欠です。私が確認する際は、できるだけ政府や教育機関などの公式サイトから情報を得るようにしています。また、同じ内容を3つのサイトで検索し、一致する場合にその回答が正解である可能性が高いと判断して確認しています。

 

ご清聴ありがとうございました。

 

國吉氏:鈴木さん、ありがとうございます。では、Q&Aの時間を設けたいと思います。AI主任のお話がありましたが、RAGを使わずに作られたそうですね。データを絞り込む工夫をされ、精度を保ちつつ適切なデータを取得する方法をとられたと思います。この辺りの詳細について知りたいという声がありますが、いかがでしょうか。

 

鈴木氏:はじめはベクトル検索などを試してみましたが、意図しないものが引っかかることが多く、技術的に難しいと感じて方向性を変えました。代わりに、Chatworkのグループから主任AIに質問があった場合、どのグループからの質問かを判別し、対応するスプレッドシートにアクセスできるようにしました。ただ、データをそのままChatGPTに渡しても精度は低いので、列情報に日本語だけでなく重要度や影響度などの数値情報も持たせています。GPT-4を使えば高い精度が出せますが、コスト面を考慮してこのような工夫をし、GPT-3.5で実用しています。

 

國吉氏:ありがとうございます。今のお話を伺うと、RAGを使うかどうかのポイントの一つとして、質問と回答の関係がある程度明確で、回答が特定できる場合は今回の方法でも対応できます。逆に曖昧で幅広いデータから検索する必要がある場合、RAGが向いているというイメージですね。

 

鈴木氏:そのように思います。

 

國吉氏:なるほど、ありがとうございます。では、私から最後にお話をさせていただきます。

一人ひとりにあわせた学びを届けるための生成AI活用術

國吉氏:改めまして、國吉と申します。ベネッセとGenerative AI Japanで活動しています。AIについては、予測系のAIが流行っていた頃から関わってきました。今日は私の見立てや事例を共有できればと思います。

國吉氏:人間の意思決定プロセスでは、観察して判断し、行動するという3つのステップがあります。一方、AIは入力を処理して出力するという流れで、処理の部分が人間の意思決定に近づいてきています。また、入力と出力がサービスやデータとつながることで、例えば車のデータを即時に解析して判断し、車が動くというように、スピードが上がることで今まで実装できなかったことが可能になってきています。

 

これまでの教育が答えのある問いに対する学びを中心にしていたのに対し、答えがない問いに対する学びやその問いに答えるプロセス自体が重要だと認識されるようになったことです。日本の教育も変化し、この変化の激しい時代にどう学ぶかが重視されるようになりました。このようななかで、教育分野でのAIに対する期待も高まっていると考えています。

 

このような変化において、教育における評価と指導がポイントとなり、単に答えの正誤だけでなく、プロセスを磨いたり、改善方法を考えていくことが大切で、一人ひとりに合わせてサポートしていくことの重要性も高まります。状況の把握、リコメンド、モチベーションの維持などが重要ですが、これらを個別に対応することは先生たちの負担が大きくなります。生成AIの技術は、一人ひとりに合わせた学びを実現しつつ、先生たちの負担を軽減することに活用できる可能性があり、教育業界で注目されています。

國吉氏:生成AI以前の事例として、算数や数学のように基礎問題を間違えてしまうと応用問題も間違えてしまうような前提知識が積み重なる学びでは、間違えた原因を予測し、不足している知識を補強するような形で、学ぶ内容を調整していくサービスが広がっていきました。また、学習後の点数の伸びを予測し、伸びしろを見せることでモチベーションを上げるサービスもあります。同じ予測技術でも、間違えた原因の部分に着目するか、伸びしろに着目するかでUI/UXが大きく変わります。

 

生成AIになるとサービスへの適用可能性の自由度が高まる一方で、正しくない情報を提示してしまうリスクも増えるため、どう向き合うかが課題となります。教育における一人ひとりへの学びを届けるために、生成AIの技術が非常に有用だと考え、2023年4月頃からAzure OpenAIを使って実際に触り始めました。

 

2023年の夏に、小学生の親子向けサービス「自由研究おたすけAI」」をリリースしましたので、その背景をご紹介します。「自由研究おたすけAI」は、夏の自由研究のテーマをAIキャラクターと一緒にみつけていくことができるサービスです。

國吉氏:当時は、AIが答えを教えてしまい、学びの質が下がるのではないかという懸念があり、学びのサービスにおいて、AIを使わないほうがいいのではないかという議論もありました。しかし私たちは、AIが発想を広げることにも使えると考え、そこを重視して、企画を考えていきました。

 

実現したいことは、答えを教えることではなく、考える力を養うことです。そのプロセスに意識が向くようなUI/UXを考えました。また、保護者とお子さんが一緒に学べる情報リテラシーを学べるサービスも組みあわせることで、うまくサービスを活用できるよう工夫しました。

 

もう一つの事例として、先生向けに問題を自動作成するシステムを開発しました。ハルシネーションを起こさないように検証しながら、特化したプロンプトを作成し、知識データの有無による問題や解説の質の変化を調べました。

 

将来的には、先生の負荷なく一人ひとりに学びを届けられるようにしたいと考えていますが、ハルシネーションとのバランスをどう取るかは課題です。社会実装をどのようなステップで進めていくのかというロードマップをつくりながら、方法論を深めながら、活動を進めています。

國吉氏:以上が私のパートになります。

 

お時間も近づいてきましたので、クロージングに移らせていただきます。高木さま、鈴木さま、改めて発表いただきありがとうございました。第2回目は5月下旬に開催予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。